犠牲 柳田邦男著

副題「わが息子・脳死の11日」。作者の家族の事である。死との狭間である脳死の状態での家族の気持ちと臓器移植を決意する経過、恐ろしくリアルで衝撃的である。
この類のものは、あくまでも第三者として書かれているものがほとんどであるだけに、ノンフィクションとしては必要以上に感情移入してしまった。
新聞などで脳死臨調とかいう単語はよく見掛けたが、その見方は第三者としての目であった。しかし、この本を読んでみると、今までの脳死についての議論の中で何が問題なのか、どんな目でそれを見つめるか、というのがとてもよく理解できる。「死」を扱っているだけに、スパンと線引が出来ず、1+1=2とは必ずしもいかない問題である。
誰にでも関係しうる事であるので、ぜひ1度読んでみてもらいたい。お薦め度:95/100
犠牲(サクリファイス)―わが息子・脳死の11日 (文春文庫)