ルポ「まる子世代」

 「変化する社会と女性の生き方」という副題がついているが、その通りの内容。まる子世代とは、アニメ「ちびまる子」の時代を過ごした1964-69年に生まれた女性達のことを、著者が勝手に表現しているもの。

 基本的に本書で述べられている通りで概ね間違いないと思われるが、著者自身もまる子世代であるからかもしれないがい、その視点からしか主張が述べられておらず、総じて不満と不公平に物申すという形に終わっているのみ。論点定まらない。

ルポ「まる子世代」 ―変化する社会と女性の生き方 (集英社新書)

ルポ「まる子世代」 ―変化する社会と女性の生き方 (集英社新書)

 著者は、学者でなくコピーライターなどの経験を経ているようであるが、引用書籍なども○○新書とかの一般書ばかりで、学術論文まで整理した中で議論がされていない。また、ルポ題しているとおり、いくつかのインタビューを試みているが、あまりにも標本が少なく、その者の信頼性がないとは言わないが、社会全体としてそれを否定する意見もあろうかと感じる。

 ちなみに、P162の中段の表現誤りを見つけた。

 その結果80年代に成立した政策が、専業主婦批判の槍玉として挙げられる第三者被保険者制度、俗にいう「103万円の壁」「130万円の壁」「141万円の壁」である。

 第三者被保険者制度などという言葉はなく、槍玉に挙げられいるのは、年金制度でいう第3号被保険者制度。
 また、「103万円の壁」は配偶者特別扶養控除で不公平感を平準化している制度であるが、コレは一部見直しがされた(著者は原則廃止と表しているが、廃止はされていない)。特に配偶者特別扶養控除については、著者の主張と違い、雇用促進の意味合いが強いものと考えられる。今度の一部見直しは、過剰な保護について見直しされたもので、制度成立時の目的そのものを変えたものではなく、まして廃止をしたものではない。

 いずれにしろ、その程度の本なのであろう。