プライバシー権について

6月30日、金沢地裁が、住民基本台帳ネットワーク(住基ネット)の憲法適合性について判決を下した。この住基ネット訴訟の判決要旨が新聞に掲載されたので検証してみたい。内容については専門家ではないので誤りがあるのかもしれないが、一国民からの視点での意見として掲載する。


プライバシー権 (1)


 日本国憲法にプライバシーという単語は出てこない。憲法第13条には「個人として尊重される」という表現をしているが、この部分がいわゆるプライバシーは守られるべきであるという解釈なのだろう。

第13条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。


ところが、プライバシーの概念がはっきりしない。過去にも多くの裁判で争われているようだが、確かに何をプライバシーというのか考えてみると、明確に線引きができない。人に知られたくないことというのが一般的なイメージだと思うが、電話帳にも掲載され、自宅の表札にも書かれている住所や名前がプライバシーなのかというと、さて、どうなのか。


今回の裁判で争われた内容は住基ネットであるが、ここで取り扱われている個人情報は、いわゆる4情報、住所・氏名・性別・生年月日であり、これも問題になっているが、住民基本台帳法に基づき申請をすれば、役所で誰でも閲覧が出来る情報と同じモノである。


他の法律で自由に見られるモノが、どうしてプライバシー侵害となるのか。この点がポイントなのであろう。


さて、判決では、この混沌としたプライバシーの権利の中に自己情報コントロール権が重要な内容として含まれると明言してる。
日本では、この自己情報コントロールという概念が薄く、一般国民にもそのような感覚が無かった。欧米では、これら概念は早くから確立されていて、社会の中で個人のプライバシーという面が早くから重要視されてきたことをみると、明らかに日本はプライバシーの保護という面では後進国であったと言える。


自己情報コントロール権とは、自分の手元になくても自分に関する情報であれば、そのものにアクセスし関与できる権利を言う。
例えば、役所が保有するヲレの所得情報は、あくまでも役所に預けて(預託)してあるだけであり、役所のモノではなくヲレのものである。いくら確定申告によってヲレの収入状況を役所に提供したといっても、差し上げたわけではなく、単に預けただけということだ。
だから、このヲレの所得情報については、役所が自由に使い、他所に提供することは出来ない。それをするにはヲレの許可が必要となる。つまり、ヲレの許可なしに、役所は勝手に利活用できないという原則が自己情報コントロール権なのだ。


これは相手が役所に限らない。民間事業者が持っている個人情報にもヲレはアクセスする権利がある。金沢地裁は、自己情報コントロール権は、憲法第13条によって保障されている権利と明確に述べているのだ。

 【疲れたので、明日に続く】