ナイチンゲールの沈黙、ジェネラル・ルージュの凱旋

海堂尊は、『チーム・バチスタの栄光』で感動して、続いて読んだ『ナイチンゲールの沈黙』でがっかりして、『螺鈿迷宮』で幻滅した。海堂尊曰く(『ジェネラル・ルージュの伝説』による。)「違う小説なんだから『チーム・バチスタの栄光』と比較されても困る」というが、あくまでも金払っている読者の期待に対する落差なんで、これは読者側からみれば十分あり得る評価だと思う。

ジェネラル・ルージュの凱旋

ジェネラル・ルージュの凱旋

で、今回『ジェネラル・ルージュの凱旋』上下巻(宝島文庫版)を読んだわけだが、いやこれが前2作は何だったんだというくらい面白い。わーっと一気読み。とにかくかっこいいのだよ、速水先生。ヲレは、何を隠そうICUフェチなので、無条件に尊敬する。救急救命は重要、利益を生む・生まないで単純に判断されるべきではないと思う。

上巻の最初から、この本よんだっけ?なんて思いながら読み続けたが、解説読んで納得。『ナイチンゲールの沈黙』と同時進行なんだよね。まったく内容を忘れている。こっちは、ミステリーではなく、例えば大藪稔彦著『孤高のメス』のようなエンターテイメントとして十分楽しませてくれる。登場人物が実にうまく絡んでくるし伏線も全部回収していく展開に脱帽。

ナイチンゲールの沈黙

ナイチンゲールの沈黙

ということで、同時並行と判ったのならもしかしておもしろかもしれないと『ナイチンゲールの沈黙』を再読。でもね、やっぱりダメ。そのおもしろさの差にあらためて愕然する。つまらない。同時並行の物語であるが、双方の物語の登場人物に矛盾と不合理をたくさん感じる。医療という至極現実的な世界なのに、事件解明までの流れは非現実。失敗。要するに、あえて殺人事件が起こるミステリー仕立てにしなくてもよかった。「このミステリーがすごい!」大賞受賞後の最初の作品なので、ミステリーにせざるを得なかったのか。

まあ、残念だが仕方がない。本読みって、永遠の宝物探しだから。