時が滲む朝

今年の芥川賞受賞作品の『時が滲む朝』は、在日中国人である楊逸(ヤン・イー)氏の作品です。あまり芥川賞作品は読まないのですが、今回は在日中国人作家初の受賞ということで、興味を持って読んでみました。

正直、読んでいる最中からはてなマークいっぱいでした。この作品を強く推薦した選考委員の高樹のぶ子氏は私の尊敬する作家の一人ですが、なぜこれほど推薦したのでしょうか。残念ながら芥川賞受賞作品としてのレベルまで達しているとは思えません。昨年度も候補になりましたが、「日本語がつたない」という理由で受賞はされませんでした。今回の作品がどうかと言えば、やはり日本語がおかしいです。文章もやはり稚拙な部分が見受けられます。「いや、それが文学だよ」なんて言われると反論が出来ない程度の根拠なのですが。とにかく読んでいる最中、自分ならこう書くだろう、この表現は日本語としておかしいなんて感想が頭の中を巡り小説に集中できませんでした。

中国民主化勢力の青春と挫折という主題はとても良いです。もっともっと書き込んでもらいたいと思います。この原稿量では、折角の壮大なテーマが、解説書のように淡泊で薄っぺらく感じます。天安門事件を数行で終わらせるのはもったいないです。中国から見た日本、在日中国人から見た中国など、書き込める材料がいっぱいです。そうこうしていると、直木賞候補になるような大河小説ができそうです。

中途半端で日本語がおかしいこの作品に勝てなかった日本の作品・作家の方々、もっと頑張ってください。今の芥川賞のハードルはあまり高くなさそうです。