編集者ほど面白い仕事はない

著者は、講談社に勤め、『週刊現代』や『フライデー』の編集長となり、取締役第一編集局長を兼任。ビートたけしと軍団の編集部乱入事件の責任をとる形で退社している。現在、テーミスの代表。

この本は、著者が講談社に入社してから現在までの体験や出版界の内幕を余すことなく紹介している。著者が活躍した時代は、ヲレが読書に夢中になって勉強もせず過ごした中学校時代と重なる。この本に出てくる作家や書籍は、まさにヲレの青春時代への回帰。懐かしさと同時に、あの時代を著者のような人たちが作り上げていたのだなと、時代の裏側を初めてのぞいたような気分でもある。

例えば・・・、梶山季之扇谷正造大宅壮一有馬頼義松本清張井上靖柴田錬三郎源氏鶏太、笹沢佐保、司馬遼太郎新田次郎三島由紀夫井上ひさしなどなど。ざっと拾っただけでも、こんな作家の名前が出てくる。ほんと、懐かしいよ。

この本の中で面白いなあと感じた著者のエピソード。

帝国ホテルのロビーで三島由紀夫にすれ違い、「ご無沙汰しております」と挨拶した伊藤氏に、三島由紀夫は野太い声で「オウ」と答えた。その数日後、三島由紀夫は自決。

三島由紀夫かあ。もう一つ。

目白の田中邸、「伊藤君の選挙区はどこだ?」と聞かれ、「静岡一区ですと答えると、「今あそこは自民党で一杯だ。しかし、選挙に出たくなったら必ず言ってきたまえ。一人降ろすから」と言われた。

「日本中のことは、すべて目白で決める」と豪語した田中角栄らしい発言。面白すぎ。

ということで、裏も表も見て体験してきた著者の話は、興味深い。出版界に興味がある方は、読んでみるとよいかもしれない。

ちなみに、昨年、著者には仕事の関係で随分とお世話になった。この場を借りてあらためて多謝。