字幕屋は銀幕の片隅で日本語が変だと叫ぶ

これは面白い。昨今の新書ブームでは出せば売れるみたいな雰囲気があるが、こういった良質の書籍もあるのだと判り嬉しくなる。

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著者は映画の字幕をつくる、つまり翻訳する字幕屋。映画の字幕翻訳は普通の翻訳と違って俳優がしゃべっている時間しか翻訳文を表示できないので、台詞の内容を100パーセント伝えることができない。

俳優がしゃべる台詞を如何に要約して本筋と外さず雰囲気も壊さない翻訳をするかが勝負だ。例えば、本の中から抜粋すると

吹き替え「なぜもっと前にそれを言わなかったんだ?」
 ↓
字幕「なぜ黙ってた?」

とか、

むっつり黙り込む女に男が問いかけるシーンで、
吹き替え「(男)どうしたんだ」「(女)あなたが私を落ち込ませているのよ」「(男)僕が君に何かしたか」
 ↓
字幕「(男)不機嫌だな」「(女)おかげでね」「(男)僕のせい?」

など。字幕は1秒4文字が原則なので、このように短くなる。これ以上長くなると字幕を読んでいる内に映像はどんどんすすんでしまうそうだ。なるほど。

その他、日本語がおかしさとか配給会社との攻防など面白い。さすがに文章も簡潔でわかりやすい。かなりお勧めの本だ。