原子炉を眠らせ、太陽を呼び覚ませ

肺炎で病気休暇中に読んだ本。有益だった。

1年以上前に購入した本だが、ずっと積ん読状態であったもの。なぜ読まなかったのかというと、表紙イラストが胡散臭い図柄で、タイトルと併せると、新興宗教を思わせる雰囲気があったからだ。

原子炉を眠らせ、太陽を呼び覚ませ

原子炉を眠らせ、太陽を呼び覚ませ

ところが読んでみると、なかなかアカデミックで原子力の基礎から紐解いてくれる。著者は、仁科賞受賞の原子核物理学者で、単なる原子力アレルギーのエセ物知りではない。広島に原爆が投下されたときには、東京大学在学中、海軍技術研究所(静岡県島田市)にいて、いち早く原爆の正体を知ったという筋金入りの学者。

放射能の歴史から現在の原子力発電の問題点まで、順に解説をしてくれている。某原子炉から30キロ付近にするヲレとしては興味深い。なぜ、この本をヲレが受け入れ易かったかというと、序文に書かれている次の文章だ。

私は、(原発)に賛成か反対かというような不毛の次元で動くことは、科学者としてとるべき態度でないと信じる。重要なのは、そういう不毛の政治的立場をとることではなく、どうすればわれわれの生活を、現状から脱してより良く、かつ安全なものにできるかという問題に取り組んでいくことである。

その上で、著者は、現在の日本の原子力行政や放射能安全対策など様々な瑕疵を指摘し、その是正策などを主張している。最後に本題のある提案がされるのであるが、ちょっとこれは現実的にどうかと感じるが、本人は十分本気で、実現可能な提案と述べている。

いずれにしろ、いろいろな考え、意見がある中で、この本は、冷静に原子力について基本的なことを教え、そして示してくれる良書である。