ストーリー・セラー

カバーデザインが素晴らしい。随分と売れた本だが、その理由の一つには装丁の勝利っていうのがあるね、間違いなく。この本が平積みされていれば、つい手を取りたくなるもん。おまけに有川浩となれば尚更だ。

ヲレには、小説家がエッセイを書き始めたり、作家の日常を題材にし始めるともう落ち目っていうイメージがある。イメージとしては、ネタ切れで身近なことしか書けなくなるからだ。でも結構このイメージは正しかったりして、そうして消えていった作家を何人も知っている。

ストーリー・セラー

ストーリー・セラー

でも、作家を題材としたこの本に関してはさすが有川と言うべきか。虚構を重ねた展開は、一工夫も二工夫もしてあり、ページをめくる手を止めさせない。絶妙なのは、逆に有川本人のことではないかなんて読み手を心配させるほどの余韻だ。なるほどこういうアイデアもあったかと。全体的に、重松清著『その日のまえに』を彷彿させるが、残念ながら重松ほど泣けない。

最後に、本体の紙質が悪い。カバー装丁のすばらしさに相反する新潮社の営業姿勢に幻滅。