一瞬の風になれ(3)

吉川英治文学新人賞受賞作品の最終巻。

最初は、読むの止めようかなと思ったくらい変な文体だと感じていたが、読み進むにつれて小説全体に漂う爽やかさに引き込まれた。40歳過ぎて青春小説もないだろという感じがしないでもないが、いや今の若い衆もなかなか良いではないですか、なんて素直に青春を感じることができた。新人賞受賞作らしい初々しい巧みな小説だと思う。

3分冊であるが陸上をテーマとしているだけあって、1巻は「イチニツイテ」、2巻は「ヨウイ」、3巻は「ドン」とルビが振ってある。洒落ている。

一瞬の風になれ 第三部 -ドン-

一瞬の風になれ 第三部 -ドン-

ボリュームは段々と大きくなっている。1巻は228ページ、2巻は273ページ、3巻は383ページ。最後まで読ませる自信があるのだろうか、価格も最終巻は100円高い。そう言った意味では良心的でもあるが、8ポ2段組のような重厚な造作でも良いのではないか。それでは爽やか・清々しくなってしまうかな。

あえて不満なところを挙げるとすれば、終盤になって主人公の彼女のことが忘れられてしまっていること。かなり消化不良。ハッピーエンドを期待していたのだけてとても残念。