劔岳<点の記>

新田次郎の小説、15年ぶりに再読。新田次郎の小説の9割くらいは読んでいる。それぞれ秀逸なものばかりで、ヲレにとってはもっとも再読が多い作家の一人。『劔岳<点の記>』は読んだ記憶があるが、さっぱり内容を忘れてしまっている。ロードショーも終わりそうなので、読み返してみたもの。

いやー、いいね。著者の真面目な性格がそのままになったような緻密な文章に感動する。劔岳の初登頂という偉業にあえてドラマ性を持たせず淡々と描く著者の姿勢には経緯を表す。いいねえ。

映画の『劔岳<点の記>』だ。煮詰まった仕事の合間を見て、休暇をとり、束の間の映画鑑賞。最近は、藤枝シネ・プレーゴばかりなのだが、上映時刻が午後1時40分だけって勘弁してよ。休み取らなければならないし、周りは映画素人っぽいおばさんだらけでぞんぐり。放映中に携帯画面みるなよ。

この映画は、原作の小説を読んでから行くべきだと思う。より良く理解できる。これ映画が理解できるというよりも、原作の小説に映像が加わり、より小説が理解できるということ。映画の脚本は、原作から間引きされ、ドラマ性を持たせ、脚色がされている。わかり易いかも知れないが、本物ではない。

大体、映画ではあっさりと登頂してしまうのだけれど、実際は違うのね。その時の状況もなにもかも。事実とはまったく違う。映画だけ観て知ったかぶりすると、恥かくレベルだよ。

映画のラスト、「仲間たち」というクレジットは良かった。スタッフも映画での登場人物も、みな仲間たち。監督の思い入れが、ここに最も表れているのでは。

本物の劔岳は、立山・室堂から遠くに見えたな。カニノヨコバイの写真を『山と渓谷』で見ては、いずれは!なんて15年前には考えていた。懐かしい。最近、少し山歩きを再開してみようかなと思い始めている。そんな中の『劔岳<点の記>』だった。