涙の川を渉るとき

仕事中に読んだ業界紙に掲載されていたブックレビュー。紹介者は、日テレ『ズームイン!!SUPER!」に出演している読売新聞特別編集員の橋本五朗だった。その紹介文を読んで、これは読まなければいけないぞと、仕事中であったがほぼ日手帳にその場でメモをした。

著者は、作曲家の遠藤実。『北国の春』『星影のワルツ』など数千曲の作曲をしている。この本は、遠藤実の自伝で、貧しい子供時代から作曲家として成功し、妻に死に別れるまでを気負いなく書かれている。最後には、読みながら涙で字が読めなくなる。

貧しく苦労の連続。貧しさゆえ14歳で就職し、弁当は生の大根に生味噌を塗っただけのもの。一度でもいいからご飯を腹一杯食べてみたいと夢見ながら働く。吹雪の夜の道、手袋もせず荷物運びをする。寒さと恐怖から手に小便をかけると、凍えた手肌にじーんと血が通ってくる。「惨めなおれにの体の中には、こんな熱いものがあったのか。まだ頑張れる。頑張らないでどうする。」と自分に言い聞かせる。

飽食の時代。恵まれすぎて何が足りていないかがわからなくなっている。ヲレもそうだ。多くの人が、ほんの些細なことで不満を言う。我が儘、勝手。以前からも時々書いているが、今の現状に満足をしなければならない。この本を読むと、こんなに豊かで幸せな時代に生きていることを感謝をしなければならないと心底感じるだろう。借金をして読んでも惜しくない。

ちなみに、この本は、Amazonマーケットプレイスで購入。新品同様の書籍が送られてきたが、裏表紙を見ると著者のサイン入り。

いったい誰が、著者のサインも入っているこんなきれいな状態の本を中古本として流通させたのだろうか。恐らくその人は、この本を読んでいない。少なくともヲレはこの本を一生捨てないであろう。とてもとても、とても捨てられない。