一瞬の風になれ(2)

そもそもこの小説はどうして三分冊なんだ。

「全国書店員が選んだ一番売りたい本 2007年本屋大賞」と帯では宣伝しているが、そうなると中身は兎も角として、三分冊にしてなるべく売上を増やそうなんて考えるかもしれない。1巻と2巻が1400円、3巻が1500円、読了するまで4300円も必要。4300円ならかなり重厚な書籍が買えるぞ。納得がいかない部分。

こういう商業主義が本を売れなくするんだと思う。

とは言え、この2巻は良いぞ。ぐいぐい引っ張られ止まらない。第1巻の1行目、

 次の日曜日はクラブの遠征試合で駒沢公園まで行くから、「トーキョーに行くぞ!」とメールを打ったら、「だるい距離だな」と連から返事が来た。

なんじゃこりゃとかなり脱力しながら読んでいたのだが、現代っ子の感性を醸し出すため意図的にこういう文章にしているのだなと段々判ってきた。読み進める内に、味が出てくる。悪くない。

特にこの2巻。まるで、あだち充『タッチ』の陸上競技版という感じで、不覚にも涙がこぼれそうになった。これはやばいぞ。