ゴールデンスランバー

「全国書店員が選んだいちばん売りたい本 2008年本屋大賞」受賞作。ヒット作を飛ばし続ける伊坂幸太郎の小説。本屋大賞の権威を象徴するような面白さだ。

首相の凱旋パレードでの暗殺事件から始まるが、そのものが主題ではなく主人公が犯人に仕立てられ追われるという点に焦点が当てられている。全編が伏線という精度の高い内容で、一時も目を離させない。余分な会話もなくすべてが全体を構成する枝葉になっている。すごいぞ。

後半、一気に収束に向かう。かならずしもハッピーエンドではないが、その結末には十分納得のいく後味の良い結末となっている。

主人公が口ずさむ"ゴールデン・スランバー"は、ビートルズのアルバム"ABBEY ROAD"に納められている曲。1969年7月30日、ビートルズ最後の録音。この本を読みながら、何度も聴いてみた。「もう、戻れないんだな」というポール・マッカートニーの気持ちとこの本の主人公が置かれている立場、限りなく切ない。