国のまやかし、税源移譲、騙されてはいけないよ

地方分権の推進」という隠れ蓑の元、税源移譲が行われることは、新聞や自治体広報紙で賑やかに案内がされている。国税庁のホームページでも、実に淡泊に説明をしている。

だが、騙されてはいけない。理論的には国が言うとおりなのであるが、実情は違う。国のまやかしだ。

平成19年から、地方分権を進めるため、国税(所得税)から地方税(住民税)へ税金が移し替えられます(3兆円の税源移譲)。

確かにサラリーマンは給与から源泉徴収を天引きされているので、この1月から税額は少なくなっている。そして、6月からは住民税が増額。理論的には「行って来い」で表向きは税金の移し替え。

しかし、「平成19年」というのは如何なものか。実際は、所得税は「平成19年分収入」からで、税額が確定するのは平成19年度末の年末調整、又は、平成20年の確定申告である。とくに自営業者は、平成20年の確定申告で納める所得税が減額されるというもの。住民税の課税基礎は、平成18年分収入。これでは、移し替えによる「行って来い」プラスマイナスゼロの実感は生まれないだろう。

したがって、移し替えというのは感覚的にはおかしい。この部分の説明は、

この税源移譲によって、ほとんどの方は、所得税が平成19年1月から減り、住民税は平成19年6月から増えることとなります。
税金の移し替えなので、所得税と住民税とを合わせた税負担が変わることは基本的にありません。

「ほとんどの方は」「基本的に」という言葉で簡単に片づけられている。最悪のパターンは、自営業者で平成18年分は収入が多く税金を沢山納めたが、平成19年分は事業不振により収入が少なくなった場合は、まったく移し替えにならない。なぜなら、課税基礎となる収入年が異なるからだ。

もう一つの不思議は、住民税の県税と市町村民税の税率。住民税の内訳として、県民税と市町村民税があり、県民税は県へ収納され、市町村民税は納税者が住んでいる市町に収納される。課税事務や収納事務は市町村が行い、県は市町村から振り込まれるのを待っているだけといういわゆる上納金制度だ。

税源移譲で、住民税は見かけ上は大幅な増税になる。市町村の役所は、住民からの苦情・怒りを一手に引き受け、大変だ。住民と接触のない県職員は鼻歌で高みの見物。

おまけに、税源移譲で増加する税額は、市町村よりも県の方が多いというていたらく。これは、県税の税率は、2%又は3%という累進課税であったが、税源移譲後は一律4%になる。市町村民税の税率は、3%、8%、10%の3段階が一律6%と均されて課税がされるためだ。

同じく地方分権を掲げて実施された平成の市町村合併により、静岡県であれば静岡市浜松市が政令市となり、県の事務管轄から外れた。ということは、単純に考えれば県の職員は半分に減らしても従来とおりの事務事業が可能なのだ。もちろん県が必要とする財源もそれほど必要としないはず。

ところが、今回の税源移譲により一番の恩恵を受けるのは都道府県であり、まさに左うちわの状態。

住民税を納める納税者は、納めた税金が市や町で使われると思っているが、そんなことはない。6割近くは県が掠め取っていく構造であり、一番の問題は、その辺の説明を国も県もしないことであろう。

所得税と住民税が変わるゾウ、どんなふうに変わるんダイ

なんてふざけたポスターを作っている場合ではないだろ!総務省。最後に、もう一つ。今回、どさくさに紛れて実施した定率減税の廃止により、基本的に増税になるというのが事実で、この説明が、小さい小さい。まったく酷い話である。