山田太一著『空也上人がいた』

出た!今年一番の傑作(私が読んだ中では)で、久々の借金をしても買え本です。空也上人像のペーパークラフトを作っているので、たまたま目に止まった小説なんですが、山田太一の集大成ではないかと思えるような作品です。

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まずは、脚本家が書く小説らしく、最低限の文字でその場の空気まで描く筆力、セリフの妙、読者に先を想像させる絶妙な展開、登場人物の設定の巧みさ。一文字たりとも無駄がない完成され尽くした文章です。

更にストーリが凄まじい、高齢者福祉の現場、老いるということはこういうことなんだなと非情に描きます。老人、中年、若者の3人が外から寄り添う危うさ、一緒に歩いてくれる人の存在を空也上人に被せる優しさ、10年経ったらもう一度読んでみようかと思います。

それにしても登場する81歳の吉崎老人は、やっぱり笠智衆しかないんだよなあ。とすると、もうドラマ化はできないや。だから小説にしたんだろうと勝手に思う。