ものすごくうるさくて、ありえないほど近い

チープで覚えにくい邦題だなと思いながら、スクリーンに入場。ほっほっほっ、今日も一人だ、110席を独り占め。

まずは素晴らしかった、映画の可能性に乾杯だ。原作も売れたようだがその辺の知識なく観たわけだが、間違いなく脚本が秀逸。病気の苦しみを映像で描くのは難しいと思うが、アスペルガー症候群という世間に理解されにくい子供が題材、これを憎しみから悲しみ、愛しみと観客を時間と共に変化させていく展開は、「いや、やられたよ」と敗北を宣言したくなるほどだ。タンバリンのシャリシャリシャリって音が印象的で、病気の苦しさを表現し見事。

ものすごくうるさくて、ありえないほど近い

ものすごくうるさくて、ありえないほど近い

ヲレが大好きなトム・ハンクスと歳をとったがサンドラ・ブロックをキャストに選びながら、明らかに脇役にしてしまうのも監督の映画に対する姿勢だろう。なにもCGや3Dにしなくても、有名俳優を前面に出さなくても良い映画は作れるのだということ。とは言え、トム・ハンクスも地味に素敵。あの肩をくいっってやるシーンって、彼ならではという演出。サンドラ・ブロックもちょっと過剰な展開だが、母親の愛情っていうものを言葉少なく表現していた。歳をとっても、やっぱり美しいね。

間借り人役のマックス・フォン・シドーも素敵な演技をしている。役柄を自分のものに変えてしまう良い例だ。凄い。少年オスカー役の神経質っぽい演技もしっかり的を射ているが、やっぱりこの映画は脇役人の完成度の高さが主役の少年を効果的に持ち上げている。少年が訪れる人びと、鍵の持ち主、祖母などなど、どこかで手を抜き欠ければ、少年の演技は過剰だけで終わってしまうだろうし、アスペルガー症候群の複雑さも理解が得られない。って、そんなに単純なものでないだろうが。

事象を重ねながら展開するストーリなので、映画だけでは理解できないところがあったが、多民族が暮らすアメリカで起こったテロとその被害者、3世代にわたる家族の歴史、愛情、市井のやさしさ、たまらなく辛い映画だが最後に救いがある。ということで、借金しても観なさい。