「患者様」が医療を壊す

医療、特に地域医療の崩壊についてはもう語り尽くされた感がある。ヲレの部屋から眺めることができる公立総合病院も思いっきりその波に呑まれ、まさに崩壊寸前の所で沖縄徳州会に救われた。その経過や原因についてここで述べるつもりはない。ただ、事実として医療崩壊の現場に身を置いてみると、不毛の対立の構造に畏怖の念を抱く。切実な問題だ。

「患者様」が医療を壊す (新潮選書)

「患者様」が医療を壊す (新潮選書)

そういった意味では、この本はとても良かった。対立と対話の構造が実によく理解できる。医療を題材として述べているが、これは医療だけの問題ではなく、教育でも家庭でも職場内でも人間関係が存在するところの永遠の課題だ。正論を振りかざすだけではなく、最も効率よく賢く生きるすべを語る秀逸の書籍だ。

全体的に理路整然として、素人でもすんなりと頭の中で整理することができる。著者は現役の医師なのだが、おごることはなく謙虚だ。かと言って卑屈ではない。ヲレの仕事は相談業務なんだが、持ち込まれる話はどれもが対立の構造からくる歪みだ。この本を読めば、半分が解決するのではないか。昨年、受けた傾聴体得講座でも似たようなことを言っていたな。例えば、評価してはならない。

要するにコミュニケーションの在り方を洞察する一冊。医者も患者も、先生も保護者も、行政も国民も、老人も若者も、夫も妻も、嫁も姑も、対立が存在するところのみんなに読んで貰いたい書籍だ。楽しく賢く生きようよ、わずかで一つしかない人生なのだから。