逮捕されるまで 空白の2年7ヶ月の記録
この本を読むに当たっては、
- 感情的にならない。
- 反省を求めない。
- 事件の全容を明らかにするものではない。
と自分自身に言い聞かせて、自己ルールみたいなものを定めた。なぜなら、こういう本を手にすること自体に若干の罪悪感があるからだ。興味本位ではないかと問われれば否定もできない。だからこそ、それはそれとしてというスタンスをとった上で読まないとつまらないからだ。
結果としてどうだったかというと、逃亡メモとしては実に面白かった。文学である必要はなく、あくまでもメモレベル。文章は稚拙であるし、混乱していたのかわざとなのか判らないが支離滅裂な部分もある。意図的ではないと思うが、これがかえってそうだったのだろうとリアルに感じる。
逃亡中も身勝手な理由で自分の存在を納得させているが、そんなものにこっちは期待しているわけではない。どういった行動をとったというのぞき見てきなところだけ。犯罪者の戯言。ヲレがこのような事態になった時、どうするのだろうという仮想空間。いつ何が起こるか判らないこの世の中、こういった逃亡記録は知っておきたいところだ。知りたいことは、どうやって逃げたのかということだけ。
住民票も携帯電話もなくても働くことができる。働く気持ちがあれば働く場が提供される貧困ビジネスの現場も描かれていて興味深い。多分、おまえに言われたくないよ反論があるだろうが、テレビ・マスコミのいい加減さも書かれている。
事件の根幹の部分については全く述べていない。そんなもの知りたくない。これは多分、本人のダメダメなところの表れだろうが、刑に服すという考えや気持ちはまったくない。マスコミの前に自分をさらしたくないという自己都合だけの逃亡。起こした犯罪とまったく同じ動機なのだ。所詮、一線を越えたということは、そういう素地があるということ。
- 作者: 市橋達也
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2011/01/26
- メディア: 単行本
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その他、読み終わって感じたこと。それは、自分たちが戸籍制度・住民基本台帳・健康保険という制度に守られているということの安心感と、完全にインターネットや携帯電話に依存している社会になったということだ。これらは、それを失わないと身をもって感じられない事なのだろうけど、そういった部分をこの本から得たことは大きな収穫。