家に帰らない男たち

著者の松井計ってどこかで見た名前だなあと思ったら、『ホームレス作家』の著者だった。読んではいないけど。

自宅や妻子を持ちながら仕事が終わっても家に帰らずサウナやカプセルホテルに泊まってそのまま仕事に行く人たちをインタビューし、その背景を探ったルポ。『ホームレス作家』が売れたためホームレスから脱却した著者からすると、自宅がありながら家に帰らない(帰れないではない)人たちを不思議に思ったのは当然だろう。

6人の男たちを取材している。それぞれ原因・理由は違うが、誰にも共通するのは、自宅に帰らない事に対して負担に思っていないこと。逆に家に帰ることが負担になったり、家族に気を遣ったりしている。週末には家に帰り家族サービスをするパターンが多いのだが、要するに家族というものが崩壊しているばかりではないということ。

うーん、微妙に気持ちがわかるというころが怖いなあ。そうなりたいと思わないが、この本を手に取ったのも、心の奥のどこかで興味があったのだろうと想像する。

その昔、独身の頃、仕事が終わって名古屋まで遊びに行き、カプセルホテルに泊まって、始発の新幹線で戻ってそのまま仕事に行くという若いからなせるような経験がある。今思い出しても、ちょっとうらやましいというのが本音。カプセルホテルの部屋に入ると、妙に落ち着いたものだ。

ヲレは、借金を抱えながらも持ち家だ。帰ることができる家があることに安心をしている。しているが、どこかにそういったものの破壊願望もあったりする。まあ、小心者だからそんなことはできないのだろうけど。妙な読後感であった本だなあ。