がん病棟のピーターラビット
- 作者: 中島梓
- 出版社/メーカー: ポプラ社
- 発売日: 2008/08
- メディア: 文庫
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メモ魔の作家らしく患者の気持ちとか患者からみた医療が正直かつ詳細に書かれている。そこには悲愴さは無く冷静で淡々とした表現がかえってリアルに感じてしまう。思いつくまま書き綴ったような文体も生々しい。
1月に手術をしこの本が書かれたのだが、その後、肝臓への転移が判明し、現在も末期がん患者とのこと。これら経緯が書かれたあとがきが素晴らしい。生きている現在を楽しみ、そして幸せだと感謝している著者の姿勢には感服する。かつて、父親が入院し見舞いに訪れた著者に父親が語りかける言葉が印象深い。著者の人生観に大きな影響を与えた出来事だったのだろう。
今度帰ってくるまでは、パパはいないだろうからね。だが、何もパパの一生は思い残すことがなかったから、何も心配しないで行ってきなさい。何ひとつ思い残すことのない一生だったから。じゃあ、これが最後だと思うから、さようなら。
この言葉が著者との最後の会話となったとのこと。死を迎えてこんな言葉が出るような一生を過ごせたら、本当に幸せだ。