ゼロ・ダーク・サーティ

アカデミー賞は、音響編集賞の受賞だけであったが、ヲレ、この映画は最大限評価する。仕事後の激疲れ状態で臨んだレイトショーであったが、いやいや158分、息もつかせない緊張感で釘付け。この映画は凄い。

ストーリは、CIA情報分析官の執念、オサマ・ビンラディンの所在を確認、そして遂に隠れ家を突き詰めるというもの。映像的には、最後の隠れ家襲撃シーンは必見。妥協を許さないリアルさが怖い。

前半は目を背けたくなる拷問シーン続出だが、これも真実の歴史。アメリカ、CIAの汚点であるこれらシーンをあえて取り入れた姿勢に感服する。このシーンがあるから、後半の自爆テロによるCIA局員の犠牲などが反面、悲劇を増幅する。憎み・争う人間の暗部が画面全体に映し出される。結局、暴力の連鎖では何も解決しないむなしさを感じるのは、制作者の求めるところであろう。

アメリカって怖いっていうのが素直な感想。こういう暗部を抱える大国なんだよなとあらためて知る。この映画のすべてが真実である必要はない。事実に至る経過を真実に近いだろうという状態まで再現し、小物はもとより光や空気まで妥協を許さない画作りをすることによって全体がリアルになる。キャスリン・ビグロー監督は女性なんだよな、主人公CIA情報分析官の女性マヤという人物づくりは、監督同様これまた妥協がない。仕事をする女性、すごいよ。

襲撃シーンは、その場にいるような臨場感たっぷり。暗視カメラを用いた現代の討ち入りだね。基本、抵抗なくても動く者は順に殺していく。殺意ではなくて、人殺しの訓練を積んだ軍人の一歩一歩前進するための手順であって、死ぬか生きるかの立場に置かれるネイビー・シールズとしては、まあそうかなと思わせるシーン。ドアブリーチなんかも爆薬をブーツの横からべりべりと取り出して(剥がして)やるのだけれど、あんなものだけど凄い破壊力。でも一カ所失敗して突入できないんだよね、完璧ではないところがやっぱり本物っぽい。

H&K HK416アサルトライフルのレーザーサイトもそれぞれ向いている方向が、しっかりとポイントをついていて無駄がない。まあ、軍事技術って究極の効率化だから、無駄がないのは当然といえば当然。でも、そういう細かいけれどもすげーって思わせるシーンを随所に描いているところがリアルなのだよな。

以上、ヲレ的には『ハート・ロッカー』よりお薦めだが、子供・気が弱い女性は観ない方がいいかも。後味は良くないと思われ。