すべてがあの日のまま放置されている

所用により臨時通行証を申請して浪江町に入る。福島県浪江町は、平成25年4月1日に区域見直しが適用され、原子力災害により3区域(避難指示解除準備区域、居住制限区域、帰還困難区域)に再編されている。

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沿岸から500メートルのところにある浪江町請戸小学校。雑草の中に残る校舎であるが、原発事故によりこの地は、いまだ何も手を付けられていない。

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昇降口から海岸側を望む。この正面から津波が何度も襲い、校舎を破壊した。

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1階から窓の外を見ると、ほぼその高さまで瓦礫が積み重なっている。

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天井は落ち、金属やパイプは波の勢いでねじ曲がっている。壁は流されてしまったのか。波が校舎の一階を渦巻いて通り過ぎた様子が想像できて恐ろしい。ここには、潜在的な恐怖と悲しみが渦巻いている感じがする。

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海岸と反対側になるが、体育館の入り口。津波は押して引いてとなるので、裏側とはいえ遠慮なく破壊していく。

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床が陥没している。卒業式の準備がされているが、この校舎で卒業式は行われなかった。

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教室の黒板に書かれている応援メッセージ。恐らくその日の午後に書かれた「卒業式の練習が始まります」の文字が、あまりにも日常的な、そして特別な日を象徴していて、どうにも堪らない気持ちになる。

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請戸小学校の児童77名(2年生〜6年生)は、教職員の指示により2キロ先の山に走って逃げて全員が助かる。原発事故により、子供たちはこの場で悲しむことも懐かしがることもできず、すべてがあの日のまま放置されている。やるせなく悲しい事実。

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この4キロ先は福島第一原発。正面にクレーンや排煙塔などが見える。この現状をどう表現してよいのかわからない。どんな言葉を並べても理不尽であることは変わらない。先進国日本にこのような土地があることを忘れないで欲しい、知って欲しい。そして、ここに住まれていた方の悲しみを理解をしてもらいたい。