終末のフール

小惑星が8年後に衝突するという地球が滅亡する」と予告され5年が過ぎた頃、自分たちの命は限りあるという現実の中で一市民がどう生きるかを描いている。文庫本の帯には「世界が終わるその前に、今日あなたは何をしますか?」とあるが、東日本大震災原発事故などを目のあたりにしている今、そういう意味でいろいろと想いを馳せる部分が多い。

終末のフール

終末のフール

設定としては、予告から5年経過したので、世の中の絶望のパニック(犯罪多発や自殺など)が収まりつつあり、平穏で穏やかな時期としている。この辺の設定が絶妙のため、普通の人々のさりげない満足感を表現できている。全体的に悲壮感はなく、残忍でも無く、ほのぼのと暖かい。

構成としては、8本の短編からなるが、登場人物や事象が巧妙に関係していて、全体として一つの小説となっている。伊坂幸太郎らしい仕掛けだ。それぞれの編の名称が「○○の○ール」と統一されている。

  • 終末のフール
  • 太陽のシール
  • 籠城のビール
  • 冬眠のガール
  • 鋼鉄のウール
  • 天体のヨール
  • 演劇のオール
  • 深海のポール

どの編もいい感じだが、特に『太陽のシール』の美咲、『冬眠のガール』の田口、『演劇のオール』のみんなが魅力的。読後感も素晴らしく、伊坂幸太郎の小説の中でも飛び抜けている完成度だ。BOOKOFFで360円で購入しては申し訳ないくらいの傑作。

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