魔王

伊坂幸太郎作品の全制覇を目指している。とりあえず手に入れやすい文庫本から読み始めている。

「魔王」と「呼吸」の2編。著者曰く「直接的な続編とは言いにくい」とのことであるが、一気に読んでみれば一つの小説だと感じる。巧みにそれぞれの物語がリンクしている。

全体的に、もの凄いメッセージ性があるのだけれど、作者は、それをはっきりと示していない。社会や政治、人間関係などから滲み出る不安定さみたいなものを描きたかったのか。登場人物である実にいい関係の兄弟に与えられた特殊な能力、双方それぞれの信頼、思慮深い性格など、様々なツールがこの兄弟に期待を掛けてしまうほどののめり込みようだ。

魔王

魔王

読んでいるうちに、リアルな今の政治や社会と対比してしまい、現実なのか小説の中のことなのかわからなくなってしまいそう。不思議な小説だ。

沢山の逸話や小洒落た会話が満載であるが、その中で好きなのはこれ。

新聞紙とか、紙を25回折り畳むと、どのくらいの厚さになるのか。正解は、富士山くらいなんだって。

って言うもの。

ものの見方の意外性の例として使っているが、うん、面白い。3000メートル位になるそうだ。ヲレは、自分に出来ないことを出来る人、自分が知らないことを知っている人、どんなにつまらないことであろうが、そういう人は尊敬するし、そういうことにも感動する。伊坂幸太郎ってそういう意味では、もの凄く尊敬。とてもかなわない。