冬の小鳥

浜松シネマイーラ。2009年、韓国・フランス共同製作。

日本ではタイガーマスク現象などとふざけた名称で一時注目を浴びた児童養護施設だが、この映画は1970年代の韓国の児童養護施設が舞台。父親に捨てられ孤児になったジニという9歳の女の子。これが可愛いんだ。なんで捨てるのという思いが映画を見終わるまで続く。なんでなんだと。

ジニ役のキム・セロンという子役、これが天才というものかと感心。最初は『火垂るの墓』韓国版かとかなり警戒しながら観ていたのだが、意外や意外、一度も涙腺が緩むことなく終わってしまった。この映画は泣かせることを目的としていないのだよね、子供の心を察してくれよという映画なんだ。思いっきり泣きたいからみたいな理由で観ることはやめた方がよい。ほとんど声を発しないキム・セロンの名演が、悲しくたくましい子供の心を表している。悲しいだけではない。

この表情、どこかで見たことがある。我が子だ、親の都合で子供が理不尽な思いをしている時の顔、悲しいけれど耐えている顔だった。映画の中のジニは、ほとんどこの表情だったが、我が子の表情と重ね合わせてしまうので混乱する。そういう思いをさせていたのかと。

頭の中でいろいろな場面を思い出しながら見ていたので、恥ずかしながらこのシーンの意味がわからなかった。映画を観終わって全体のストーリを思い出しながらよくよく考えてみる。で、気がついた。運命を受け入れるため、そしてジニの再生のための儀式だったんだと。この映画の根幹のシーンだと思うが、リアルタイムで理解できなかったのが情けない。このあとの集合写真の笑顔が悲しすぎる。ジニの幸せを願わずにはいられない。

子供達がもう少し大きくなったら一緒に観てみたい映画の一つ。悲しいだけではなく、もしかしてという希望が見え隠れするところが救いだ。