阪急電車

売れたね、この小説。たしかに有川浩の作品の中でも万人にウケる完成度の高い小説。

阪急電車 (幻冬舎文庫)

阪急電車 (幻冬舎文庫)

いや実際、この本を読んでみれば阪急電車に乗ってみたくなる。リアルにどんな出会いがあるかなんて期待したくなるような強烈な感情移入が体験できる。出会いなんて作るものではなく、その機会はどんなところでもある。偶然以上の偶然はどこにも現実にあるのかもしれないと思わせる。実際、そうなんだよね。

普段から知人には本を読むことを薦めないし、貸すことに至っては99%以上の率で行わない。(過去記事:本は貸してはダメな理由、そして『浮上せよと活字は言う』http://d.hatena.ne.jp/tipitu/20090313/p1)。けれどもこの本は、仲良くしている友人に貸した。既婚歴のある婚活中の女性。彼女がある時、口に出した言葉が「もう諦めようかなあ、このまま一人でもいいかなって思う」だったので、「いや、強制はしないが、出会いなんてどこにあるのか判らないし、きっかけは思いもよらないところから生まれるのかもしれないよ。諦めることを決めてしまう必要はないのでは」とクソオヤジの戯言を述べてしまった。その時に、読んでごらんと渡したのがこの本。2日後には、読み終わって返却。その時の言葉が「だよね」だった。

狂信的に褒めもしないし薦めもしないが、ヲレ的にはホンワカといいなあと素直に感じられた小説。自衛隊三部作図書館戦争シリーズとは違って、丁寧に積み上げられた文章に機微で繊細な感性を特に感じるのだ。