はやぶさの大冒険
いかにも子供が喜びそうなタイトルではないか。そう、この本は「中学生でも理解できる本」として書かれている。難解な科学の世界を分かりやすく噛み砕いてまとめ上げた山根一眞に脱帽。ヲレのような文系事務職・くそオヤジでも、日本の技術力の凄さが理解できた。
- 作者: 山根 一眞
- 出版社/メーカー: マガジンハウス
- 発売日: 2010/07/29
- メディア: ペーパーバック
- 購入: 11人 クリック: 321回
- この商品を含むブログ (59件) を見る
とにかく凄いよね、もう凄い凄いとしか言いようがない。具体的な数字や比喩で説明されるとそれがよくわかる。例えば、
- 星のかけらを拾って地球に戻るまでに、60億キロを7年間かけて旅をするはやぶさ
- はやぶさが着陸するイトカワは、直径500メートル。
- イトカワは、時速10万キロで移動している。
- 10万キロで移動するイトカワに着陸するために、同じ速度で並んで飛ぶことが必要。はやぶさは、2年間掛けて時速10万キロになるよう加速し続ける。
- はやぶさがイトカワをピタリととらえるのは、東京から2万キロ離れたブラジルのサンパウロの空を飛んでいる体長5ミリの虫に、弾丸を命中させるようなもの。
- イトカワに到着時のはやぶさと地球の距離は3億キロ。地球に電波が届くまで片道16分かかる。
- 着陸するときは、1秒1センチのズレも許されない精度で計算している。
- はやぶさは、正確にイトカワの軌道を通らなければならないが、その精度は1秒間に30キロ素進んだ場合で1センチのズレもないもの。
- 地球スイングバイの精度は、甲子園球場のホームベースに立ったバッターが、ホームランを打ってボールをバックスクリーン上の直径0.1ミリ以下の的に当てる正確性が求められる。
- イトカワのデジカメの画素数は100万画素。
- イトカワと地球間の回線スピードは、8bpsしかない。
- はやぶさのカプセルが地球の大気圏に突入するときの速度は、秒速12キロ(時速4万3000キロ)、音速の35倍。その時の空気の側の温度は摂氏1万度にもなる。カプセル自体は3000度。
- カプセルの大気圏の飛行距離は、高度200キロの位置から斜め下方向に1000キロほど飛び、高度20キロになると速度が落ち降下を始め、高度10万キロでパラシュートが開く。
- カプセルは、計算で設定されたエリアに99.7%の確率で着陸する。
など。
はやぶさとの関係は、まさに人と機械との心の交流。7年間という長い時間、大変だけどこんなに楽しいと思えることに関われる研究者たちが羨ましい。
この本、これからの日本を背負っていく子供たちに読ませたい。そういった意味では、1300円という定価も良心的で好ましい。