狼は瞑らない

山岳警備隊が活躍する冒険活劇。著者、樋口明雄の本は初読み。というよりも知らなかったよ。このハルキ文庫の最後に掲載されている「ノベルズ版あとがき」がすごく良い。現在、著者は、南アルプスの麓に住んでいるという。そういった前知識があれば、この小説もより楽しめる。

狼は瞑らない (ハルキ文庫)

狼は瞑らない (ハルキ文庫)

私は、その昔、静岡県警山岳救助隊が南アルプス千枚小屋で酔っ払って悪態を突きまくっているのをこの目で見ているので、この小説には中々感情移入できなかったのだが、古典的であるが気合の入った筆力に屈服し、最後は一気読みとなる。

最後の結論がすごく曖昧で、いったいあれはどうなったのかという部分が多々あるが、エンターテイメントとしては凄く良質で楽しませてくれる。実に面白い。昨今、内容はともかくとして小奇麗な文章で書かれる小説が売れる中で、久しぶりに昭和の匂いを感じさせる荒削りな小説が読めたのは少し安堵した気分。

総じて山岳小説はどれも面白いなあ。