ETCカード2枚使いとファミリーロッジ旅籠屋

先週末、2泊3日の家族旅行に行った。経費を切り詰めた自家用車の旅だ。ガソリンはしかたがないとしても、有料道路と宿代は、うまく節約できたと思う。

有料道路は、ETCカードの2枚使いで朝夕の通勤割引(半額)を使いまくり。正規料金は、700キロ走った中で1度しか支払わなかった。1万円は節約したと自負。

そして、宿泊は2泊とも「ファミリーロッジ旅籠屋」を利用。家族4人で1泊して10500円。朝食は、コーヒー・ジュース・パンのサービス付き。予約はインターネットで2日前。アメリカでいうモーテルの感覚だ。

さて、この旅籠屋について語ってみよう。

旅籠屋は、いわゆるベンチャー企業。その苦労は、社長である甲斐氏の『旅籠屋 孤軍奮闘中!』を読むとよく判る。

旅籠屋孤軍奮闘中!

旅籠屋孤軍奮闘中!

1人分の宿代で4人が泊まれる旅籠屋のシステムは、「客が求めないサービスは、サービスしない」という合理的な発想が基本のようだ。例えば、食べきれないほどの豪華な食事、豪華なロビー、カウンター、建屋など。家族で泊まる場合(とくに子連れ)は、適度に広い部屋と気軽に自由に過ごすことができる雰囲気があれば良い。のんびりしに来ているのだからということだ。では、気になったこと、気づいたことを箇条書きで。

  • 2カ所に泊まったので比較ができたのだが、おそろしく統一感が図られていることがわかる。システムはもとより、建物・宿泊ルームの形状、備品など。
  • 驚くべきことに、各部屋に貼られている案内文の文句まで同じ。フォントの種類や大きさ、色使いまで同じ。コルクボードに貼られている位置まで同じ。没個性。
  • シティホテルによくあるベッド組み込み式のラジオと照明スイッチ、アラームなどの操作盤はなく、普通の目覚まし時計が置いてある。これで充分用をなす。社長曰く、「先回りしたサービスは付け加えない」。
  • エアコンは、普通の家庭用のもの。
  • ユニットバスだが、トイレは別というのが良い。トイレマットも薄手のバスマットと共用。
  • 節約しているばかりではない。例えば、防音についてはピカイチだ。満室であったにもかかわらず、他の部屋に人がいる気配がしない。他の部屋のシャワー、トイレの水を流す音、ドアを閉める音などがまったく聞こえないのだ。建物の構造だと思うが、きっちり堅牢に造られていているのだろう。お見事だ。
  • 朝食用のトレー。100円均一で売っているようなものであるが、こんなものまで統一した製品。用意されるパンの種類、ジュースの種類なども同じ。ある意味、支配人が工夫する余地を奪っているとも言える。支配人がよかれと思ってやったことがマイナスになることを恐れるのか。それとも、あくまでも「統一感・イメージの維持」なのか。それが、良いか悪いかは、年々旅籠屋の事業が拡大している現状を見ると明らかだ。
  • 一泊目の情報が2泊目の旅籠屋の支配人が知り得るネットワークが整備されている。ただし、初めて行った旅籠屋で、「もう2度目ですから説明はいいですよね」なんて言われると、「えっ、どうして知っているの」とギクリとする。ヒステリックに個人情報がどうたらこうたらと言わないが、あまり良い印象ではない。予約や会計システムがオンライン化されていて本部でリアルタイムで管理できるというのが自慢のようだが、自分の行動が丸裸になっているようで気持ちが悪い。判っていても「旅籠屋の利用は初めてでしょうか」ぐらい確認する手間は惜しむことはないだろうと思う。
  • ベッドがフランスベッド製で心地よい。
  • 旅籠屋はすべて有線LANによるインターネット接続が無料で使える。これは便利。今回は、MacBookを持って行き、翌日の行程検討に役立てた。旅籠屋のサイトには「支配人の大半はネットに詳しくないため、接続に関するサポート等はご容赦ください。」とある。部屋にLANコネクタが無かったので、フロントで「CATVでしょうか」と聞いたが理解されなかった(これで・・・とモデムを渡された)。うーん、サイトのコメントに偽りなし。

以上は、使ってみての素直な感想。そして、次回も使いたいというのが本音。さらなる規模拡大に期待する。

さて、最後に書籍『旅籠屋孤軍奮闘中!』の感想。

社長の甲斐氏の個性は激しい。サイト内の日記も同様。至って正論で判りやすいが、これらに対する異論や反発もあるだろう。極論を言えば、「気に入らなければ利用して貰わなくても良いぞ」くらいにもとられてしまう。自分にそぐわない意見・考え方に対して徹底的に闘う姿勢。そしてネット上の書き込みに対しても「人間として最低」と言い切る。役所の指導や金融機関などに対してもだ。

それぞれの立場というものがある。「柔軟な考えを」というが、それがその立場の中で、許される場合と許されない場合がある。個別の問題は別として、十把一絡げにしてダメだと決めつけていくその姿勢には疑問を持つ。もう少し、それらに対してそんな理解があっても良いのではないか。旅籠屋を利用する人は千差万別、役人や金融機関、JAの人も使うかもしれない。また、インターネットへの書き込みにすべて高レベルのものを求めること自体がナンセンスであり、インターネットの有効性を述べている割には、あまりにも短絡的な意見であると思われる。中学生レベルの書き込みでも、そこには何かがあるのではないかというような大きな気持ちがあればと思うのは、私だけであろうか。

社長のこだわりと信条が、この旅籠屋を育ててきているということは間違いない。けれども経営にかかわらないことに対しては、あるいは表現として、まさに社長が言われる柔軟な対応が求められるのではないか。そんなふうに思いながら読み終わる。読後感はあまり良くない。