銀輪の覇者
タイトルから判るとおり、自転車ロードレースを題材とした小説。ハヤカワ文庫で上下巻、たっぷりと楽しむことができる。「このミステリーがすごい 05年版」でベスト5になった本。
- 作者: 斎藤純
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2007/08/25
- メディア: 文庫
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ユニークなのが、設定が軍歌の音が忍び寄る昭和9年だというところ。しかも、下関から青森まで日本を横断するという賞金レース。ここに、軍や特高、貧困にあえぐ村、宗教団体、ドイツ、任侠、ツール・ド・フランス経験者などなど様々な思惑や人間関係が絡まり、そして終盤に向かって解れていく。面白いですよ。
しかしながら、あくまでも自転車競技なので、それは今も昔も変わらずチームで、あるいは集団で空気の壁と戦うのは同じ。自転車競技としての戦術やシステムはしっかり描かれていて、決して違和感はないところがさすがだ。スポーツ小説として十分楽しめる。
苦しい。こんなに苦しいことはかつてなかった。だが、苦しさを感じるのはまだ自転車に乗っている証に他ならない。そして、誇りをまだ捨てていないことの証でもあった。
そうか、苦しくないと感じるときは、誇りを捨てたときなのか。辛いことだな。