サクリファイス

昨日のエントリ『ゴールデンスランバー』に続く、2008年本屋大賞2位を受賞した小説。大藪春彦賞も受賞している。

ツール・ド・フランス」に代表される自転車ロードレースを題材とした小説。ただし、マニアックな内容ではなく、自転車競技を知らなくても、あっという間にストーリに引き込まれてしまうだろう。だからといって、スポーツという部分に光を当てたものではない。青春小説とミステリーを足して2で割ったような感じか。

"サクリファイス"は犠牲とか犠牲的行為の意。競輪もそうだが、自転車競技はチームワーク戦であり、先頭で引っ張る選手は風を受け後ろに続くチームの犠牲になる。選手はそんな役割に徹し、最後にゴールをトップで走り抜けることはない。そんな競技だ。

長編とは言い難い余分なモノをそぎ落としたようなシンプルな展開は、かえってスピード感を増し、衝撃的なラストにぐいぐい突き進む。犠牲となる先行選手に引っ張られるよう。帯には「とにかく読んでください。絶対に損はさせません!」とあるが、久々の「借金をしても読め!」認定本だ。