星新一 1001話をつくった人

569ページ、2300円、じっくり書き込まれた良書。ショートショートの第一人者であるSF作家 星新一の生涯をたどったもの。

星製薬の長男、父親の死により若くして社長となるが、なにもしないうちに会社は倒産、残務整理やらなにやらで無為な日々を過ごした青春時代。星新一の前半生は、実に薄暗く、覇気がない不幸な時間を過ごしている。

ショートショートを書き始めても、SF小説は世に認めてもらえず、長編や短編小説に比べショートショートは原稿料も安く、なかなか世に浮かばれない。

星新一 一〇〇一話をつくった人

星新一 一〇〇一話をつくった人

30数年前、ヲレにとっての星新一は、小松左京筒井康隆眉村卓などと同列でいつも書店の書棚に並んでいるというメジャーな存在であった。特に、書籍の後半は、青春時代を思い起こすに十分な懐かしい作家の名前が、次から次へと出てくる。同じ時代の空気を吸っていたと実感する。残念ながら、ヲレは長編小説を好んでいたため、正直言ってショートショートに魅力は感じていなかった。今、書棚を見てみても、星新一の本は数冊しか見つからない。様々な冊子でその名前は見かけたが、見開き2ページに納まってしまう程度のショートショートという形態は、読んだという記憶にどうしても繋がらないの。星新一が死ぬまで気にしていたところだ。

SFというジャンルを確立することに生涯を捧げ、ショートショートを1000話作るのだとただそれだけに精力を注いでいた星新一は、芝居や純文学の分野に挑戦し認められていく筒井康隆や映画の制作に没頭する小松左京をうらやましく、しかし寂しく感じていた。そんな心情が、ずっしりとこの書籍から読み取ることができる。読了感は、非常に重い。