年金の記録不備、社会保険庁

社会保険庁が管理する公的年金の記録不備問題。新聞紙上が賑やかだ。

随分前のことであるが、社会保険事務所に親族の年金のことで相談したことがある。その時の対応ときたら、酷いものだった。社会保険事務所については、(相談員の)対応が怖い、威張るなどの不評が多いようだ。

意外に良いなと思ったのが税務署。税務署はお金をいただく側であるので低姿勢である。しかし、社会保険庁は年金保険料の納付は個人の責任、我々は年金を支払ってあげるのだ!みたいな感覚であろうな。言うこと聞かないと年金支払わないぞという理屈だ。

今回のことも社会保険庁は思い切り叩かれている。ヲレの過去の経験からしても仕方がないなと思う一方、年金記録に限って言えば、致し方ない部分もあると思っている。その理由は、

  • 年金制度ができてかなりの期間、紙ベースの台帳管理であった。
  • 基礎年金番号に統合される前までは、厚生年金は社会保険庁、国民年金は地方自治体が主に管理していて、住民基本台帳とのマッチングはされて折らず本人届出のみが頼りだった。
  • 基本的に、年金加入・脱退は、本人届出が原則。コレを怠っていた個人の責任の部分が大きい。
  • 何年か前から、保険料収納管理が地方自治体から国へ移管されたが、社会保険庁では人手不足で保険料収納率は低下するばかり。とにかく何でも公務員を減らせ!の世情は、必要なところに人手がが回らなくなり、現状維持が精一杯。過去の整理をしている暇がない。
  • 大都市圏の地方自治体の年金管理がいい加減であった。大都市圏では、学生や単身赴任、出稼ぎなど住所を移さない人への加入促進や管理がされないことが多かった。住所を移した人でも、新たな年金手帳(番号)を乱発行し、前後の経過をしらべるない。そのいい加減な管理・対応が、そのまま社会保険庁に引き継がれた。
  • 年金制度が複雑すぎて、長い間、制度間(例えば、厚生年金、国民年金、共済年金など)の関連が付けられておらず、根拠のない状態では、基礎年金番号への統合は不可能。

など、ざっと思いつくだけでもこれだけある。これらの中には、社会保険庁の努力で解決できただろうものもあるし、判らないと言って今まで手を付けなかったのは許されることではない。いずれにしろ、社会保険庁は批判されるべきであるが、国民にも責任があると言うことだ。

ヲレは、根本的な解決は、総背番号制度ではないかと思う。住民基本台帳と年金制度、税金、預金、健康保険、各種免許、犯罪歴などに共通番号が振られないと、変化の激しい今の世の中では、これらの関連性をきっちりと把握することは不可能だ。

これらは、アメリカではとうの昔に実現しているのだけれど、日本ではここでまた反対勢力が出てくる。何でも反対派だ。住所・氏名・生年月日・性別の4情報だけしか扱わない住民基本台帳ネットワークでさえ、まともに稼働させられない。

管理社会を否定し、管理ができていないことを非難する矛盾について、誰かが指摘すべきだ。今のマスコミにはその論調はない。「否定することが正義、非難することが正義、後は知らないよ」の姿勢こと非難されるべき事ではないか。

今回の年金記録について「納付確認が何らかの方法で確認できれば支払いをするが、証明ができない限り支給が受けられない」との与党の主張に対して、野党やマスコミが批判している。この批判は、果てしなく乱暴な論拠だ。

「俺のものだ」といった者勝ち、意見を述べれば自分の財産にすることできるならみんなが手を挙げるだろう。

その昔、ある団体の研修と称して、社会保険事務所を訪れたことがある。その時、年金管理をしている電算端末を少し見せて貰った。一緒に行ったある人の名前を検索すると、同じ名前で同じ漢字の人が全国で数百人検索された。同じ生年月日の人も沢山いるだろう。結婚すれば姓が変わる。住所も戸籍も変わる。同一人物と立証するのは大変だ。社会保険庁が一方的にそれらをリンクさせることは不可能だ。

要するに、こうなると個人の問題となる。基礎年金番号に統合される際には、多くが個別に通知が届いているはずだ。あえて年金に限って言えば、20歳になれば年金に加入する。就職、転居、結婚などしたらその都度、きっちり届け出をしておけば記録漏れにならない。これは義務。若い頃、いい加減にしたツケが年金を貰う歳になって回ってくる。

まあ、その他いろいろな要因があろうだろう。社会保険庁を擁護つもりは更々無いが、それぞれの責任や義務を後ろに隠しておいて、弱みを見せた者に対してこれでもかと責め、つるし上げる悪しき風潮は改めるべきであると思う。