破滅

「梅川昭美の三十年」と副題。この名前は、遠い昔の記憶にあるが、意外にはっきり覚えている。中学生の頃だ。1979年、三菱銀行北畠支店人質強盗事件の犯人だ。

破滅―梅川昭美の三十年 (ルポルタージュ叢書 17)

破滅―梅川昭美の三十年 (ルポルタージュ叢書 17)

表紙の写真を見てもわかるとおり、犯人の梅川は、大藪春彦『野獣死すべし』の伊達邦彦なんだよね。ヲレも憧れていた。銃への憧れなんて、それがとてつもない権力の象徴のように思っていたし、それを持つことによって万能の力を得ることが出来るとも勘違いをしてしまいそうな魅力があった。

月間『GUN』という雑誌を毎月購読していたが、犯人の梅川も購読していたと当時報道され、そこでやめた。これ以上嵌ると、何かやばいことになるのではなんて、ちょっと冷静になったからだ。

この本は、なかなか味がある。活字もいい。写真も古くさくていい感じ。奥付の日付は、

  • 核時代34年(1979年)8月10日初版第1刷
  • 核時代50年(1995年)12月25日初版第8刷

と小粋だ。この奥付について、

「昭和」的「平成」的年号の拒否私たちが生存している今日の状況をふまえ、ジャーナリズムの果たす役割を忘れぬためのとの思いを込めています。

と断りが入っている。だからといってこの本の価値が上がるわけではない。せっかく言い本棚と思ったのに、この断りがとても残念。